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装丁もタイトルも面白いので読んでみた。角田光代さんの小説は、家族間、特に親と子との間の気持ちが丁寧にうまく書かれているので、きっと期待を裏切らないと思って読んでみた。
(前回読んだ「夜をゆく飛行機」も面白かったから。) 今回もやはり面白い、不倫の相手である男の家庭で生まれたばかりの赤ちゃんを奪って逃げる女の話であるが、事件を追うのではなく、
赤ちゃんと一緒に逃げる女のひたむきさと共に芽生える愛情が読み手に暖かく伝わってくる。特に小豆島に渡ってからの生活が生き生きしており、誘拐した娘である「薫」ちゃんと誘拐犯である女との
本当の親子以上の思いがうまく描かれている。(本当の親子でないから、捕まるまでの時間しかないから愛情が深くなるのか)。特に最後に誘拐犯である女の人が捕まる時、薫ちゃんに向けて大声で発する言葉には、泣けてくる。
「八日目の蝉とは何か」、一度読んで見て下さい。あたたかい思いと、とてつもない寂しさを味合うことが出来るかもしれません |
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宮部みゆきさんは大好きな作家の一人で、ほとんどの作品を読み終わっている。この「楽園」は映画化もされ有名な「模倣犯」と同じ主人公が登場するが、連続しているわけでなく「模倣犯」を読んでいなくても大丈夫。
「模倣犯」の事件からもう既に9年も経過したが、まだ心の傷を引きずっている主人公である前畑滋子、少しずつライター業を再開し始めるその時に「前畑さんに話をきいてもらいたい」と見知らぬ小柄な中年のおばさんが出現するのが、この物語の始まりであった。
宮部みゆきさんの小説でよく取上げられる超能力に関する不思議な話である「自分の亡くなった息子が描いた絵が実際の事件を予知していた」というもので、それが真実なのか調べて欲しいというお願いだった。
訳あって高齢で生んだ子供を女手ひとつで苦労して育てていた、その愛しい子供が突然に事故で亡くなった。まだその事実を受入れられない思いをくんで、前畑滋子は少しずつ事件を調査していくようになる。
調べていくうちに依頼者であるおばさんの不可解な過去と調査し始めた事件の一つである「蝙蝠の風見鶏の家の床に眠る少女の絵」の事件が少しずつ明らかになってくる。事件は既に解決してしている、が、真実は隠されたままではないか、
前畑滋子はそう思い色々調べ始め、疑問点を次々に解明していく(ここら辺がぐいと読者の興味を掴み取り、読者を話の中に引きずり込む)が、真実は固い岩盤の奥に隠されたままのようで掘っても掘ってもなかなか突き当たらない。
その「真実」とは?長い物語であるが、上下刊とも一挙に読み通すことが出来た面白い小説である。
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純朴な「青春小説」というのだろうか?何でもありの現代において、まだ青春物が存在するかと不思議に思っていましたが、
まだあったんですね。今しかない気持ちの迷い、青春の光と影、思いを伝えられないもどかしさ。何だろう。「高校3年生」という中途半端な時期、受験勉強もしなくちゃいけない、進路も決めなくちゃいけない
でも、なかなか決まらない。何をしたいかのそれもわからない。好きな人もいる、高校の思い出もつくりたい。でも、何もしていない。そんな時の最後のイベント「歩行祭」、ただ単に夜通し歩くだけ、それだけ。
競うわけでも、点数がつくわけでもない、ただ、みんな揃って歩くだけ。ストーリーはそんな状況から始まる。恩田陸さんのファンタジー小説は、ちょっと分かりにくいが、この「夜のピクニック」は分かりやすく、
一言「うまい」に尽きる。登場人物の表情、思い、その場の景色がうまく伝わり、今ここで行われているような心地よい気分にさせる。 大きな事件は起きない。でも、登場人物それぞれに小さな事件を抱えている。
そんな事件を抱えながら、物語は続く、歩行は続く、事件は解決するのかしないのか?途中からそんなことはどうでもよくなる。生きている時間の一断面を覗き込んだだけで、解決も正解もない。
でも、本人には分からない名残惜しい時間がそこにはあったと後から気づくのかもしれません。そんな気持ちをいだかせる久しぶりの「青春物」の傑作です。 |
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この物語を非常に面白くしているのは、博士が歴史学者でも物理学者でもなく数学者であるからで。つき合わされている登場人物も絶妙である。奥さんであっていけないし、
隣近所の人や親戚の人であってはならない。この女の人は、家政婦かホームヘルパーの人か、とにかく仕事でもって博士の世話をする人でなければならない。「数学」でわくわくさせる物語は初めてである。
学生時代、数学の得意な子は、ぼーとしてスポーツなども出来なくても「頭はいいんだろうな」と思わせる何かを持っていた。ただ、それは学生時代には、必ず算数や数学の試験があり、みんながとにかく受けなければ
ならないものであったからで、やらなくてもいいものになれば一挙に無視されるものになる。特に、女の人は手厳しい。「数学なんか何でやらなくちゃいけなかったの?普段の生活に何の役にもたたない。サイン、コサインなんか
どこにも出てこないし、時間の無駄だった」と。しかし、また自分の子供のことになると「数学ができるようになれば進学も楽なんだけど」と嘆く。つまり数学は試験だけに必要なもので、後はまったく役に立たない無駄なものという
認識しかないことになる。事実、数学の得意な子にあこがれを持つのは、その後、医者になったり有名大学を出てエリートになるかもしれない期待があったかもしれない。そのまま数学が得意で、そのまま数学の先生になっても、
同窓会の時の噂話にもならない、ただの変わり者で終わってしまうかも知れません。 |
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もともと奥田英朗さんの小説は何を読んでも面白いが、この「サウス・バウンド」はその中でも登場人物、特に子供達が生き生きと書かれ絶妙である。何か訳ありで縁を切られている母親の実家を
探りにいって、とてつもなく金持ちだったことにびっくりする二人の様子。不良の中学生との対決場面と友達と家出するさま。誰にでも子供時代にありそうな事件が次から次へと起こるのが変に懐かしく
面白い(これは昭和時代の子供だな)
突然、子供には関係ない理由(親のせい)で物語は、東京から沖縄へ飛んでしまうが、沖縄に着いた子供達の描写がうまい。親にほったらかしにされた男の子とその妹が自転車に乗って
誰もいない、誰も知らないアスファルトの道を疾走して様は、まるで映画の1シーンを見ているようで、その部分だけでも一読の価値あり、子供達だけで考え行動する
さまは、何かわくわくさせる冒険心を揺り動かす。 |
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テレビのニュースを見ていると、次から次へと毎日、毎日不可解な事件が発生して、少し前のミステリー小説など現実の事件の不可解さに付いて行くことが出来ない。
現実ではあり得ないミステリーを考えれば考えるほど、現実の事件はあっけなくその上をいく。この「贄の夜会」は、「サカキバラ事件」など現実の事件とうまく組合せながらテンポ良く
物語が進んでいく。「腕を切り取られて殺される」という残虐な事件が発生するのが始まりだが、事件に巻き込まれて殺された思われる女性の夫という男性が登場し、物語は単純な犯人探しから
複雑に絡み合った誰にも明かせない心の闇と心の闇のぶつかり合いとなってくる。過去の心の闇が新たな事件を引き起こすのか?次から次へと過去が明らかにされながらストーリーは進んでいくのであるが
誰にも本当の事は分からない。心の闇に支配された者が次から次へと死んでいき、登場人物から本当の心の裡を語ることは無い。怖い小説である。唯、最後に事件を捜査し続けた刑事が残り、自分も過去に
苛まされながらも生き続ける決意をするのが印象的で救われる。 |